大きな波にどっぷり飲まれる。「クールベと海展」
緊急事態宣言前にいってきました、パナソニック汐留美術館でやっている「クールベと海展」。
クールベといえばフランスの写実主義画家。目に見えるものを、ありのままに描く。
その究極の作品といえば、美術史上最もスキャンダラスな作品とも称される「生命の起源」。私も初めて見たときは衝撃でした。
ですが、今回の作品展で取り上げられているのは彼が緻密に細密に描写した、
海を中心とした風景画です。
時に穏やかで、のどかで、優しく明るい。
そして時に荒々しく暗く、深い。
そんな森や海の様子を、何度も何度も夢中になり彼は描写したようです。
彼の初期の風景画から晩期に至るまで時系列とともに並べられていましたが、
初期の彼の描写は意外とべた塗チックで、まだまだ進化途中という感じがしました。
全盛期の彼の作品しかよく知らなかった私にはそれがとても新鮮に映りました。
やはり晩期に近づくにつれ、彼の関心はどんどん海に向くと同時に、
その細密さはレベルアップをしていっていました。
展示とともに丁寧な解説と彼のそのころの人生についての説明もあったのですが、
クールベはめちゃくちゃつかまってました。
政治的な思想とか広場の円柱壊したとか、割とコンスタントにつかまっているのが
面白くて思わず笑ってしまいました。
クールベとともに、モネやコンスタントロワイヨンの絵も展示されていて、
写実的な絵も印象派のふんわりした絵もあり、展示ボリュームも大きすぎず小さすぎずでのんびり癒されることができます。
展示室も暗くて落ち着いた色合いで素敵でした。
クールベを紹介しているこの本、ご紹介しておきます。
ぜひ、ご一読あれ
『コンサル1年目が学ぶこと』私的要点3つまとめ
数多くあるビジネス書の中で、かなり読みやすい類に入るこの本、私も読んでみました。この本の中では図解もはさみつつ実用的なスキルや重要になるポイントを30個ほど教えてくれていたのですが、ここでは私的要点3つを。
1.仕事のクオリティも早さも、「自己満足ではないか」を常に自問すること
大学時代も含め、何か課題や勉強に取り組むとき、私は変なこだわりや完璧主義な思考を持っているなと感じたからだ。例えば、ノートの取り方はこのフォーマットで、この順番でやらないと気がすまない、本を読むときは前から順番に、すべて忘れないように内容をノートに取りながら、などなど。クオリティも、締め切りに追われながら完璧できれいなものを目指していた。これまでは自分のためにやっていたことなので、自分の気のすむように自由に時間をかけていられたのでそれでもよかったが、これから先私が行うことは「仕事」であり、周りの多くの人がそこにかかわってくるということがこの本を通じて痛感させられた。そこで重要になるのは私のこだわりや完成度がいかに100%にちかいかではなく、期限と相談したときに期限内に到達できるベストクオリティを達成すること、また場合によっては素早さ重視で60%のクオリティでとりあえず出すことなのだと学んだ。私にとってこれは正直に言ってかなり気持ちが悪いし、最初は慣れないと思うが、個人ではなく全体のベストを考えることを念頭に置き、慣れていくべき価値観だと感じた。
2.相手のフォーマットに合わせること
仕事は相手があって成り立つもので、ビジネスは顧客があって成り立つものであるため、相手とよりコミュニケーションを円滑にさせるためにも、今まで以上に相手を観察し意思疎通がうまくいっているか確認する必要がある。そのためにも、人を見る観察眼を身に着けたいし、また、「万人に通じる言語は数字」とこの本でも述べられていたが、数字を武器に、論理的な構造を考え、感情よりも論理を優先させてファクトベースで話すことを重視したい。自分のあたりまえは相手の当り前ではなく、また自分にとって価値があってもクライアントにとって価値がなければ、それは仕事として何の意味も持たない。自分の気が済むかどうかではなく、相手にとって何が価値をうむもので、何を伝えれば説得力を持つのか、また相手のいる会社や環境はどんなところでどんなフォーマットを使い日々仕事をしているのか、常に相手のことをじっくり観察し、利他的な思考回路を養わなければ、ビジネスパーソンにはなりえないのだと感じた。
3.逆算力
これは何かのプロジェクトに取り組むときもそうだし、普段の生活から少しずつ気を付けたいと思った。アウトプットドリブンで作業を進めると、目的や必要な作業が洗い出せ、成果地点が決まっているからそのために必要な施策が分かり、話し合い進む。骨組みから考えることで、大枠しか決まっていないのに内部の構造がある程度見えていくのである。これは、今後仕事を進めていくうえでも、目標や将来的な着地点から今日の作業が見いだせると、迷子になることも少なくなるだろうし、やるべきこともはっきりすると思う。さらに、作業に取り組むときのみではなく、自分が話す際もそれが大事だと思った。言いたいことや自分の意見をまず自分の中でまとめて、結論が出たうえで結論からPREPの順番で話す。今の私にはなかなかできていないことだいつも経緯から話してしまったり、質問をする際は自分で質問をしている際に何を言っているのか自分でもわからなくなってしまったり、本を読みながら反省点がたくさん浮かんだ。端的に、結論から、理由と例はそのあとで。簡単そうでなかなか今の時点ではできないが、少なくとも、自分のなかでまず話したいことや聞きたいことをまとめてから話し始める癖をつけたいと思った。
以上3つでした。
もちろん、パワポやエクセルスキルも本の中では説明されていますが、そのような実務的スキルとは今回離れたところで、要点を見つけてみました。
藝大の講義をお手元に『東京藝大で教わる西洋美術の見かた』
「バランスよく作品を知るより、個々の作品に対する具体的なアプローチを学んだほうが、実は美術鑑賞のコツを得るには手っ取り早いのです。」
この本の著者の佐藤直樹先生の言葉です。
通常、西洋美術を学ぼうとしたとき、その多くは歴史の流れとともに、代表的な作家と作品を取り上げ、その時代時代の特徴を追いながら学校の歴史の授業のように進みます。
しかし、この本の目的はそのような通史的な見方をすることではなく、各時代の作品を取り上げ、その一つ一つを細部までひろい、構図を見て、丁寧に分析することで、そこから帰納法のようにその時代のエッセンスとその画家のエッセンスを抽出することです。
なので通史的に学びたい人にはあまり向かないかもしれませんが、一つ一つの絵に隠されたメッセージや、その背後にいる画家の人生、その時代背景など、一つの絵の見方を学びたい、一つ一つの絵に隠された物語を読み解いてみたいという方には非常におすすめです。
一応、私は一通りの美術史は理解していますが、それでもこの本の解説は非常に興味深く、細部の細部まで拡大して画家の意図やそこに暗示される意味を読み取っていく作業はとても楽しく臨場感のあるものでした。大学時代にこんな勉強できていたならなあと芸大生をうらやむばかりです。
佐藤さんは実際に東京藝術大学で教鞭をとられている先生で、ハマスホイ展の監修をされた方でもあります。この本をまとめる際は、実際に藝大で実施している講義を本に閉じ込めるような感覚で執筆されたそうです。
一般的な歴史の教科書のような美術本が好みではない方には、臨場感のあるこの本はぴったりだと思います。
カラー図版でわかりやすくたくさん絵画も載せられていますが、本のサイズの制限上、小さくて見づらい細部もありますので、スマホやパソコンで同じ絵をじっくり拡大して眺めながら読み進めるのも面白いかと思います。
佐藤先生のこの本を読んで得られる知識は、単なる知識ではなく、今後も鑑賞に役立つ特徴やフレームワークなど、どちらかというと「知恵」に近い感じがしました。
とにかくとっても楽しんで読めました。
ゴールデンウィーク、ぜひご一読あれ。
あやしいって、怖くて素敵。
「あやしい」って、どんな意味でしょう?
怖い、不気味、奇怪....
それだけではなく、広く深い意味でとらえた「あやしい」を、この展示会では見せてくれました。
妖艶で、エロティックで、グロテスクで、嫉妬深くて、神秘的で、同時に現実的すぎる。
おなかの底からぞわっとしたものを感じる絵もあれば、美しさに目を奪われる絵もありました。
この作品展のすごいところは、そのテーマ設定の斬新さもさることながら、取り扱っている作品の幅の広さです。浮世絵から始まり近代の日本画、西洋の象徴主義のころのポスターや本の挿絵、版画、抽象画、人形などなど。とにかく「あやしい」ものすべて。
画材も油彩から水彩、パステルにリトグラフなど多種多様。単純に、一度でこれだけ幅広く楽しめるんだからお得感満載です。
西洋作品ではミュシャの妖艶なポスターからビアズリーの奇々怪々な挿絵、ジョーンズの様々なマドンナ像をみずみずしい色彩で描いたフラワーブックなど、美しく、繊細で、なのにどこか薄気味悪さを感じる絵が並びます。
「美しきものには毒あり」まさにそんな雰囲気をまとった作品たちです。
日本の作品ではおどろおどろしいお化けや傷だらけの武将たちの浮世絵から始まり、リアルすぎてグロテスクさすら感じる稲垣仲静の「太夫」や、背景の色の深さと彼女たちの美しき青白い顔に何か勘ぐらずにはいられなくなる甲斐庄楠音の舞子たちの絵、さらにビアズリーの影響を受けその退廃的な画風を取り入れた雑誌の挿絵など、見どころ満載でした。
直視するには怖い、でも見ずにはいられないような...怖いもの見たさみたいな感覚がずっと背中にへばりついているような気持ちで展示室を進んでいったのを記憶しています。
場内はにぎわっていて、みなさん不可思議な妙な世界をたのしんでいました。
今は緊急事態宣言が出て休館中かと思われますが、解除の際は、感染対策をしっかりしてぜひあの独特な暗く深く幻想的で摩訶不思議な世界をぜひ体感してほしいです
私のアートルーティン3選
美術館、よく行きますか?
私は多いと月に4回いくくらい美術館が大好きです。
でも特別展にいくと、大人一人のチケット代って結構お高いですよね。
そのチケット代めいっぱい楽しむための、私の美術館ルーティン3つをご紹介します。
1. 美術館のチラシ、展示品一覧は必ず持ち帰る!
訪れた展示会のビラと展示品一覧表は、私は必ず持ち帰ります!そのためにA4のクリアファイルは必ず持参しています。この先開催される展覧会のビラも置いてあるので、気になった展覧会のビラも持ち帰り、自宅できれいにファイリングしています。
また展示品一覧は鉛筆で気になった作品名の横に自由にメモを書きます。「この色がきれい」「この作品なんか好き」など何でもオーケーということにして、なるべくよかった作品は記憶に残るように工夫しています。
2.ミュージアムショップをチェック!
美術館のショップって全体的にとてもセンスが良くて、アート好きのツボを押さえたグッズがたくさん置かれていますが、私は心に残った絵のポストカードは必ず購入しています。さらに展示会そのものを気に入った場合は図録も迷わず買います。
が、ここで私が必ずチェックしているのは中身の写真のクオリティです。
印刷によっては色が実物よりくすんでいたりときれいじゃない場合もあります。
また、本の継ぎ目で絵の一部が隠れてしまっていたり、絵が小さかったり...そういう残念ポイントがないか確認したうえで購入しています。
必ず見本はおいてありますので、中身をチェックすることは強くお勧めします。
3.書籍を読んで復習!
私は美術本を読んで、その展示会にかかわる画家や時代背景に関して予習してから美術館に行くようにしていますが、それでも知らない画家や知らない地名は鑑賞している間にどうしてもでてきます。
そしたらおうちに帰ってから必ず本を読みなおしたりネットで検索したりして復習をします。今後の絵画鑑賞の際のたくわえにもなるので、きっちり調べることをお勧めします。回を重ねていくと調べることも減っていきますよ。
一押しアプリ「DailyArts」
こんにちは!
今回のポストでは、私が大のお気に入りでかれこれ1年以上使い続けている、「DailyArt」というアプリをご紹介したいと思います。
このアプリはその名の通り、毎日違う美術品を紹介してくれるアプリです。
美術品は多岐にわたり、古代から現在までの時代を広くカバーし、彫刻、器から絵画まで毎日様々なものを紹介してくれます。
その美術品とともにきちんと解説文も載せられていて、知識も同時に吸収できます。
気に入った絵や画家はハートマークを押せば自分専用のお気に入りフォルダに蓄積され、有料会員はそれをあとから見返すことができます。
無料会員の場合はその日届いた美術品とその解説くらいしか見ることができませんが、
700円ほど一度だけ払えば有料会員へ登録することができ、その他の機能もすべて使うことができるので課金の価値ありです。私はアプリやゲームに全く課金しない人間なのですが、このアプリには唯一課金しました。
作品の美術史上の時代や作者もリンクとなっていて、そこに飛べば過去に紹介されたその時代や作者の作品も閲覧することができます。さらにシャッフル機能もあり、シャッフルの矢印を押すと過去に紹介された美術品がランダムに出てきてそれを再び楽しむこともできます。
このアプリのいいところは、毎日ひとつ、時代も作風も大きく異なる美術品が紹介されるその「一期一会」なところ。であったことのない作品とも出会うことができてとても楽しいです。さらに、過去にお気に入りした作品を振り返ってみると自分の好みがなんとなく見えてくることも。
毎日ひとつを紹介する形式なので、その時期のイベントごとにあった絵画を紹介してくれるのも魅力の一つです。
もう一つのいいところは、作品の細部の細部まで拡大してくまなく楽しめることです。
その作品を所蔵している美術館や博物館とパートナーの関係にあることもあり、どの作品もものすごく画質がいいので、拡大すると絵の具の重なりや凸凹、細部の筆の使い方などたくさんのことが克明に見れます。
課金も一度きりでそんなに金額も高くなく、毎日これだけ楽しませてくれるアプリなので、美術マニアにも、美術の世界にまだ片足を突っ込んだだけくらいの人にもとってもおすすめです。
ちなみにこのアプリの会社は文具などのグッズも展開しているのですが、それがまたかわいい!
私はまだ購入したことがありませんが、大きく絵画をプリントしたノートがとっても素敵なので、いつかかってやろうと画策中です。
みなさんもぜひ、手元のスマホに美術館、いれてみてください
都会のど真ん中の、レトロな空間で楽しむコンスタブル
コンスタブルといえばイギリスを代表する風景画家。
ターナーと肩を並べ、イギリス絵画の復興と風景画の発展をけん引した画家です。
現在、三菱一号館美術館で開催中の彼が主役の展示会に遊びに行ってみました。
テート美術館所蔵作品を中心に、コンスタブルの代名詞というべき優しい雰囲気をまとった写実的風景画はもちろんのこと、彼の手掛けた肖像画も展示してあります。
繊細かつ大胆な自然描写、優美さ漂う家族の肖像画など見所たっぷりで、ターナーとの対比的展示も非常に興味深かったです。
三菱一号館美術館のもう一つの魅力といえば、趣ある館内の内装。
歩くとぎしっときしむ温かみのある木造の美術館は最高に癒されます。
そしてグッズのおしゃれさと種類の多さも素晴らしいです。
私のお勧めはレジ横にあるフランス産の紙のお香。とってもいい香りでしかも扱いやすいお香ですよ。また館内のカフェではおしゃれなお茶も楽しめますので、展覧会の感想を整理しながらゆっくりアフタヌーンティーを楽しむのも幸せなひと時になるかと思います。
コンスタブルについてもっと学んでみたい方、ぜひ下記の書籍も参考になさってくださいね。